親父が存命の頃、ある日突然 「富士山に登りたい」 と言い出したことがあった。
たしか親父が米寿を過ぎてからのことだったから、彼是20年ほど前ということだ。 卒寿を過ぎた時かも知れない。
五合目までならば訳は無いと思い聞き直したところ、頂上に行きたいのだと言う。

山歩きが好きだった儂自身も富士山登頂の経験は無く、最高齢の単独登頂が何歳なのか(?) も知らなかった。
ひとりっ子の儂と女将だけでは米寿を超えた親父のサポートは無理と考え、思い止まらせた。
しかし、2~3日は繰り返して呟くのには辟易した記憶である。
後日、高齢の爺さんを一族で富士登山させたという新聞を読み羨ましくも思ったが、我が家では如何ともし難い。

親父が登山が好きだったという話を聞いた事は無かった。
何故この齢になってから...と訝しんだものだが、儂自身が高齢になり改めて思う。
日本人として生まれたからには、死ぬまでに日本一の山に登り 下界を眺めたかったのではなかったのでは。

かく言うバカな倅 (儂) は、親父の人と成りをよく知らない。
自分の事を語ることが無かった親父と、聞くことも無かった倅だ。
そんな親父が2度だけ無茶を言ったことがあった。 インパールに行きたい事と、富士登山したいことだ。
いずれも叶わないままに旅立ってしまった。 生きていたなら、104歳か~
いずれ彼の世とやらで会うことが有ったなら、一緒にやりたい事をあれこれと思うこの頃である。