朝は食パンを一切れと決めている。それも、六枚切りだ。
今の住処で暮らしだしてからはもっぱらトーストすることに決めている。
トーストする香りを楽しみながら、何を塗るかを考えるのは数少ない思案のネタの一つだ。
とは言うものの、バターにするかジャムにするかの二つの選択肢しか無いのだから、悩むほどのことではない。
糖尿病持ちとしては何も塗らないという選択肢もあるのだが、それでは余りにも寂しいだろう。
青少年の時代は母の愛がこもった米の御飯を食べていたが、就職して大酒を飲むようになり二日酔が多かったので、朝食は食べないことにしていた。しかし、50歳を過ぎた頃から始めた糖尿病の治療で「糖尿病薬を飲むと血糖が下がることがあり、それを予防する為には朝食を採らなければならない」と申し渡され、渋々はじめたことが続いているということだ。 食べたくて食べているのではないため、最低限の食パン一切れということで落ち着いている。
塗る物としているバターorジャムは、指導入院の際に病院で出されたからであり、効果の程は理解していない。
以前はトーストしていなかったが、北国を終の棲家としてからは暮らしの余裕としてはじめた。早い話が暇つぶし。
本格的に治療に取り組んだ頃は医学の知識も薄っぺらであったが糖尿病というものは他の病気と同じように完治するものだと思っていた。これから仕事を辞めるのだから、その前に治しておこうという甘い考えであった。あの頃は、以前は行かなかった人間ドッグを受けたりと前向きな人生だった。
しかし、糖尿病は治らないということを知り認識したころから俺の老後が順調にスタートしたのだろう。
六枚切りパンを食べた後のアイスコーヒーを味わいながら、長いのか短いのかは見えない未来を思う日々だ。

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